中小企業・小規模コールセンター向けAI活用ガイド

August 1, 2022

小規模なコールセンターでも、AI(人工知能)を活用し運用をスマート化できないか、と考えたことはありませんか?最後にコールセンターのソフトウェアを検討してから数年間経っている場合、以前は大企業のみが扱えたAIによる自動化分析ツールが、今ではずっと手頃な価格になっていることに驚くでしょう。中小企業や小規模コールセンターで、最新のテクノロジーを活用し、生産性を引き上げる方法について解説します。

中小企業こそテクノロジー活用が必要な理由

中小企業は、マーケティング規模、テクノロジーのリソース、予算など、すべての要素ではるかに上回る大企業と、競合しなければならないことがよくあります。さらに、規模の経済を活かして、大企業は製品やサービスの価格を下げ、インターネットの普及により、消費者は以前よりも簡単に価格を比較し、ネットショッピングができます。

一方で、中小企業への朗報もあります。商品購入を決める主な理由として、価格よりも体験が重視されるようになっています。ガートナー社の調査によると、調査対象の3分の2の企業が、カスタマーエクスペリエンス(CX)に注目しており、その数は増える傾向にあります。

当社が行った調査によると、消費者の87%は優れたカスタマーエクスペリエンスを提供する企業から購入したいという意思を見せています。こうしたニーズに応えるため、中小企業や小規模コールセンターでも、AIテクノロジーや分析ツールなどを活用する必要があります。

しかし、消費者の嗜好の変化は、価格と顧客体験にとどまりません。人々は、チャット、ソーシャルメディア、テキストメッセージ(SMS)などのデジタルチャネルや、セルフサービスを含め、企業と多様な方法でやりとりできることを求めています。小規模のコールセンターでよく使われているPBXVoIPソリューションでは、こうしたニーズを満たすことはできません。

5年以上が経過したコールセンター用テクノロジーを使用している場合は、なるべく早く、入れ替えたほうがいいでしょう。2020年を思い出してください。パンデミックによるビジネスへの混乱はいまだに続いています。これは、不測の事態に備えるため機敏性が必要だということを教えてくれました。

クラウド型コンタクトセンターは、例えばエージェントが在宅ワークをできるよう素早く設定したり、サポートに対する顧客の要求増加に対応するために素早くセルフサービス機能を導入するなど、企業の対応力を強化できます。

こうした機能はすべて、中小企業が大きな理想を掲げ、さらに大胆に行動することができるようにします。特に、AIテクノロジーと分析ツールは、中小企業がデータに基づく決定を下し、低予算で独自の顧客体験を提供できるようにし、競争力を強化します。

中小企業向けのコールセンター分析

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コールセンターの生データを実施可能なアクションに落とし込むための、分析ツールがいくつかあります。こうした分析ツールは経営者が、顧客と業務をより深く理解し、タイムリーに意思決定ができるよう支援します。

インタラクション分析

インタラクション分析とは

インタラクション分析は、通話とデジタルチャネル上の応対をモニタリングし、顧客とエージェント間の会話で起こっている内容を分析します。リアルタイムで複数のチャネルにまたがり分析する機能を利用し、コールセンターは応対中に起こりつつある問題、コンプライアンス違反の可能性などについて、非常に便利なインサイトを入手できます。

インタラクション分析の活用シーン

問い合わせ件数は安定して予測できますが、突発的にその数が増えることがあります。エージェントは応対に忙しく、コール数が増えた理由について考える余裕はありません。インタラクション分析では、新しくリリースされたソフトウェアのバグによる問い合わせ数増加、といった具体的な原因を突き止めることができます。問題を迅速に開発者へ通知し、IVRの冒頭でメッセージを流し、影響を受けた顧客へ詳細な説明と謝罪のメールを送信できます。

品質管理アナリティクス

品質管理アナリティクスとは

品質管理アナリティクスはインタラクション分析と似ていますが、品質管理に特化しています。この分析ツールは、特定の応対をキーワードや顧客の感情分析に基づき、ピンポイントで見つけ出します。応対をスコア付けするか、スーパーバイザーまたはアナリストがレビューできるようにフラグを立てます。品質管理アナリティクスは、トレンドも検出でき、経営者が品質アナリストを大勢雇うことなく、コールセンターの品質を包括的かつ正確に把握できます。

品質管理アナリティクスの活用シーン

法人向けに新しい手指消毒液を販売した企業を例にみてみましょう。その企業では、商品説明の際に、特定の言葉を使うようエージェントにトレーニングしたところです。エージェントがこの基準に遵守しているかを確認するため、品質管理アナリティクスツールに、キーワードである「手指消毒液」が使われるすべての応対でフラグを立てます。

これで、スーパーバイザーが確認の必要な応対をレビューし、どのエージェントに再度トレーニングを行う必要があるかを判定できます。この区分けは、ナレッジベースの推奨事項をリアルタイムでエージェントに提示する場合にも有効です。製品について質問があった場合、回答がすぐにエージェントの手元に届き、自動的に提案されます。

小規模コンタクトセンターでのAI活用

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AIはコールセンターの業務をスマート化し、中小企業や小規模コールセンターが顧客に提供できる体験の種類を増やします。以下、コールセンターでのAI活用がビジネスにもたらすメリットを紹介します。

AI呼量予測

AI呼量予測とは?

満足のいく顧客体験を提供するため、規模の拡大に対処できる十分なエージェントを確保することは重要です。人員配置プランとエージェントのスケジュールは作業量の予測に基づくため、こうした予測を可能な限り正確に行う必要があります。AIを活用したワークフォースマネージメント(WFM)は、個々の企業に合わせて最適な予測アルゴリズムを選択することで、より正確に問い合わせ数を予測できるようにします。顧客は待ち時間が短くなることを歓迎するはずです。

AI呼量予測の活用シーン

コール予測を担当する従業員が突然離職し、他の部門では同様のスキルや経験を持った人材がいません。しかし、直感的に操作できるWFMソフトを使用すれば、他の従業員を短期でトレーニングすることができます。さらに、ツールが最適な予測アルゴリズムを推奨してくれるため、新しい担当者は予測アルゴリズムについて深く知る必要はありません。

AIチャットボット

AIチャットボットとは?

AIチャットボットは、テキストや音声を使い自動で会話をするプログラムです。企業の営業ツールやカスタマーサポートの補佐ツールとして、使われています。また、フェイスブックメッセンジャーやラインなどのメッセージアプリで、チャットボットを利用するケースもあります。正しく設計すれば、チャットボットは、低予算で24時間無休のカスタマーサービスを提供できます。

チャットボットの活用シーン

コールセンター営業時間終了後に、予約日を変更したい顧客がいたとします。その顧客は企業のサイトに訪れ、チャットボットに問い合わせ、予約の変更を行うことができました。この体験を通じ、顧客は企業が提供する高度なテクノロジーと高い利便性に満足しています。企業はエージェントではなく、チャットボットで対応したため、人件費節約にもなります。

対話型AI

対話型AIとは?

会話型AI は人間の言語を理解し、話します。IVRと統合すれば、会話型AIを使用して顧客が要件を話すだけですみ、キーパッド入力を省略できます。さらに、セルフサービスのサポートや、通話開始時における顧客情報を収集してエージェントへ渡し、処理時間を短縮できます。

対話型AIの活用シーン

ある顧客が、口座残高を確認するため電話をかけてきました。IVRが出迎え、電話の要件を尋ねます。顧客が「口座残高の照会」と答えると、IVRはそれを理解して認証プロセスへ顧客を誘導します。認証が完了すると、IVRは口座システムを照会し、発信者へ残高を伝えます。会話型AIは音声のセルフサービスをより自然な体験にし、セルフサービスの質を向上させ、人件費を削減できます。

予測型ルーティング

予測型ルーティングとは?

スキルベースのルーティングはすでに採用されているかもしれません。一方で顧客の個性や好みを考慮して、ルーティングをさらにパーソナライズできるとしたら?予測型ルーティングは、膨大な消費者の行動に関するデータベースを活用し、特定の顧客とのやりとりに長けたエージェントへマッチングさせます。

予測型ルーティング活用シーン

とある顧客がチャット上で、問い合わせを行いました。データベースのプロフィールによると、この顧客はより丁寧なコミュニケーションを好み、スピーディーな問題解決を望んでいます。このため、オムニチャネルルーティングで顧客を、平均処理時間が短く、問題を素早く解決できるチャットエージェントへ、ルーティングします。この方法は、顧客の好みに合った方法で問い合わせに対応することで、顧客満足度を高めます。

AI活用や自動化をどこから始めるべき?

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これほど多くの選択肢がある中、何から手をつけるべきなのでしょうか。小さく始めて、学び、成功を経験しながら拡大していくことです。チャットボットは、そのスタート地点として最適です。

AIチャットボット導入手順

1.お問い合わせ内容の選定

チャットボットは、注文状況や口座残高の確認、予約の設定など、単純なやりとりで最も大きな効果を発揮する点を思い出してください。またチャットボットは、よくある質問にも答えられます。それを念頭に置いたうえで、よくある問い合わせの種類を探り、チャットボットに対応させる候補を選んでください。

2.チャットボットの設計

チャットボットの設計がうまくいかないとカスタマーエクスペリエンスが非常に悪化するため、これは最も重要なステップです。設計で考慮するのは、どの統合が必要かといった技術面から、ボットの名前や個性まで、多岐に渡ります。

3.テスト運用

チャットボットは企業と顧客にとって新たな試みであるため、テスト運用で顧客の反応をみつつ、チャットボットの効果を測定しましょう。顧客アンケートを実施し、顧客からのフィードバックを集めます。その後、集計したアンケート結果を元に、ボットを改善していきます。

4.拡張

ボットがいくつかの問い合わせ内容にうまく対応している場合、それだけで終わらせないようにしましょう。他にもボットで対応できる問い合わせがないか、別のチャネルを追加して拡張することも検討してみてください。また、チャットボットが情報を収集してエージェントへ渡し、応対を完了させる際に、スムーズに応対を引き継がせることをお忘れなく。

中小企業のコールセンターにおけるAI活用事例

ビジネスが成長すると、コールセンターも拡大し、コストや複雑さが増します。アメリカの靴小売業者DSW社もこの状況に陥り、コールセンターの人員を増やすだけでは、対応できないことに気づきました。

問い合わせ数の増加に応えるため、DSW社はIVRに会話型AIチャットボットを導入。それまでエージェントが担当していた、本人確認のタスクを実行させました。AIチャットボットの導入で、平均処理時間を約2分間短縮し、同時に顧客満足度も向上しました。現在、同社はボット対応の範囲を広げることを検討しています。

まとめ

コールセンターで新たなソリューションを探す場合、「似たもの」で置き換え、満足してはなりません。それよりも理想を高く掲げてください。小規模のコールセンターであっても、AIなどのテクノロジーを利用し、よりダイナミックで、大規模な運用ができるようになります。