アウトバウンドコールセンターKPIガイド:効果的な指標と最適化のヒント

執筆者: Michelle Melland
July 1, 2022

アウトバウンドコールセンターは、企業が顧客や潜在顧客にアプローチし、製品やサービスの提供、情報収集、関係構築を行う重要な部門です。その運営効果を最大化するためには、適切なKPIの設定と管理が不可欠です。本記事では、アウトバウンドコールセンターにおける主要なKPIとその重要性、さらに効果的な運用方法について詳しく解説します。

アウトバウンド業務の種類別で見るKPI

コールセンターのアウトバウンド業務と一口にいっても、目的はさまざまです。以下では、アウトバウンド業務の目的に応じた主なKPIや見るべき指標のポイントをご紹介します。

1. テレアポ・テレマーケティング

主な目的: 見込み客の発掘、アポの取り付け
主なKPI:

  • 接続率(発信数に対する応答率)
  • アポイント獲得率(接続数に対するアポイント獲得率)
  • リードの質(アポイントからの商談移行率)
  • コールあたりのコスト

テレアポにおいては、単純な接続数よりも、質の高い見込み客を獲得することが重要です。そのため、「アポイント獲得後の商談移行率」といった後続プロセスの成功率もあわせて測定すると良いでしょう。

2. テレセールス

主な目的: 直接的な成約・売上の獲得
主なKPI:

  • 成約率(接続数に対する成約数の割合)
  • 平均注文額(客単価)
  • 時間あたりの売上額
  • クロスセル・アップセル率

テレセールスでは成約数だけでなく、売上金額や顧客生涯価値(LTV)に影響するクロスセル・アップセル率も重視すべきです。成約率が高くても平均注文額が低ければ、オペレーションの効率性に課題がある可能性があります。

3. 督促業務(債権回収)

主な目的: 未払い金の回収
主なKPI:

  • 回収率(対象金額に対する実際の回収額)
  • 約束履行率(支払い約束に対する実際の支払い率)
  • コンタクト単価(接触一件あたりの回収額)
  • コスト回収比率(回収額に対するオペレーションコスト)

督促業務では回収額を最大化しながら、コンプライアンスリスクを最小化することが重要です。そのため、コンプライアンス違反件数などの指標も同時に監視する必要があります。

4. 調査業務

主な目的: 顧客満足度調査、市場調査、世論調査
主なKPI:

  • 回答率(接続数に対する有効回答数)
  • 調査完了率(開始した調査に対する完了率)
  • 平均調査時間
  • データ品質指標(無回答項目率など)

調査業務では、単に多くの回答を集めるだけでなく、バイアスのない質の高いデータを収集することが目標となります。そのため、回答の一貫性やデータの完全性を測る指標も取り入れる必要があります。

アウトバウンドコールセンターの主なKPI

テレアポやテレセールスを中心とするアウトバウンドコールセンターでよく使われる代表的なKPIを紹介します。

1. 接続率

定義: 発信した数に対して、実際に顧客と会話できた割合

計算式: (接続数 ÷ 発信数) × 100%

接続率はアウトバウンド業務の基本的な効率指標です。この数値が低い場合、以下の要因を検討する必要があります。

  • ターゲットリストの見直しと定期的な更新
  • 顧客が応答しやすい時間帯の分析
  • 発信番号の最適化(企業名の表示など)

2.コンバージョン率

定義: 接続できた顧客のうち、目標としていたアクション(成約、アポ獲得など)を達成できた割合

計算式: (成約数 ÷ 接続数) × 100%

コンバージョン率はアウトバウンド業務の最終的な効果を示す指標です。低い場合は以下のポイントを検討する必要があります。

  • トークスクリプト最適化
  • 成功パターンの分析とチーム内での共有
  • ターゲティング精度の向上
  • インセンティブやオファーの導入

3. 平均処理時間(AHT)

定義: 1件の対応にかかる平均時間(通話時間+後処理時間)

計算式: 総処理時間 ÷ 処理件数

平均処理時間は短ければ良いというものではありません。短すぎる場合は、ほとんど会話ができなかったなどマイナスな要因も考えられます。長すぎる場合は、トークスクリプトをシンプルにしたり、よくある質問やオペレーターがつまずきがちなポイントに対する回答を事前にまとめておくのも良いでしょう。成約率など他のKPIと合わせて見ることが重要で、成約につながる平均時間を計算した上で、分析・改善することが求められます。

4. 時間あたりコール数

定義: オペレーター1人が1時間に実施する発信数

計算式: 総発信数 ÷ 稼働時間

コール数が少ない場合は、通話プロセスの効率化やタスクの自動化など、オペレーション業務の見直しが必要です。また、コール数が多くても成約につながらなければ意味がないため、以下のような指標と合わせて見ることが重要です。

  • 有効コール率(意味のある会話ができた割合)
  • 放棄呼率(顧客が応答したがオペレーター不在で切断された割合)
  • 時間あたりの成約数

5. 放棄呼率

定義: 顧客が電話に出たものの、オペレーターにつながる前に切断された割合

計算式: (放棄呼数 ÷ 応答数) × 100%

放棄呼率が高いと成約につながる顧客を逃すだけでなく、企業イメージの低下にもつながります。その場合は、ダイヤラーの調整やオペレーターの稼働状況をリアルタイムでモニタリングするといった対策が必要です。

6. 稼働率

定義: オペレーターが実際に業務(通話、後処理など)に従事している時間の割合
計算式: (業務時間 ÷ ログイン時間) × 100%

稼働率が高い場合、人的リソースを効率的に活用できると言えますが、高すぎるとオペレーターに大きな負荷がかかってしまいます。逆に低い場合は、人員が余っている状態なので、人員と業務のバランスの見直しが必要です。

アウトバウンド業務を効率化するための3つのポイント

上記で見たようなアウトバウンド業務の成果指標を達成するためのポイントを3つに分けてご紹介します。

1. ダイヤラーシステムの選定と設定

アウトバウンド業務の効率性は、どのダイヤラーシステムを使うのか、またその設定によって、大きく左右されます。大きく分けると、ダイヤラーシステムには2つの種類があります。

プレディクティブダイヤラー

  • オペレーターの通話終了タイミングを予測し、先行して発信
  • 生産性重視の場合に有効だが、放棄呼率の管理が課題
  • プログレッシブダイヤラー
  • オペレーターが空き次第、1件ずつ自動発信
  • 顧客体験とコンプライアンス重視の場合に適切

業務目的と優先KPIに基づいて最適なダイヤラーを選定し、時間帯や業務内容によって設定を調整することが効果的です。

2. 通話録音・分析システム

通話録音は単なる記録だけでなく、品質評価や社内トレーニング、コンプライアンス遵守の証明など、さまざまな活用法があります。また、最新のAI音声解析技術を活用することで、以下のような高度なKPIの最適化が可能になります。

  • キーワード出現率と成約率の関係
  • 感情分析で顧客の反応を可視化
  • 成功パターンの特定

3. リアルタイム分析とレポート

KPIをリアルタイムでモニタリング・分析することで、個々のオペレーターのパフォーマンスをリアルタイムで確認したり、戦略の調整が可能です。効果的なレポートを作る際には、単にデータを並べるだけでなく、各KPIがどのように関係しているのか、目標値と現在値のギャップを一目でわかるようにしたり、会社、チーム、個人単位でのKPIがわかるようにすることが、重要です。

まとめ

アウトバウンドコールセンターのKPI設計は、単なる数値管理ではなく、戦略的な業務管理ツールです。適切に設計・運用された目標値は、オペレーターのモチベーション向上、顧客体験の強化、そして最終的には事業成果の最大化につながります。

テクノロジーの進化に伴い、KPI管理の精度と効率は今後も向上していくでしょう。しかし、どれだけ技術が進化しても、「何のためのKPIか」という本質を見失わないことが、アウトバウンドコールセンター運営成功の鍵となります。

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