コールセンターでのチャットボット導入メリットと必要性|NICE

コールセンターでのチャットボット導入メリットと必要性|NICE

コールセンターでのチャットボット導入メリットと必要性

チャットボットがカスタマーサービス業界に革命をもたらす可能性について、ここ数年間、多くの話題が飛び交っています。
「チャットボットが人間のエージェントを置き換える」から「チャットボットは過大評価されている」まで様々です。
チャットボットのテクノロジーは成熟しており、稼働の様子を目の当たりにすることができていますが、顧客が抱える複雑な問題を解決するには、当分の間は人間のエージェントが必要なのは明らかです。

チャットボットの初期バージョンは人々を失望させたかもしれませんが、進化が進み、営業、マーケティング、カスタマーサービス、運用で重要な役割を果たせる、高度な機能を備えるものが登場してきました。
チャットボットを未経験の場合は、自社のカスタマージャーニーでボットがどう役立つのか、想像するのが難しいかもしれません。
他の企業がボットをどのように導入し、成功裏に使用しているかを見ることで、自社のソリューションをこの先どう活用していけばいいか、参考になります。
この記事は、効果的なチャットボットの実際の使用例と、御社のコンタクトセンターに最適なチャットボットを見つけて実装するためのヒントを提供します。

AIやチャットボットを活用するコンタクトセンターの増加

消費者の間にオンラインチャットの利用が普及するにつれ、コンタクトセンターでチャットボットを採用する魅力が増しています。
当社の2020年度CXベンチマーク調査(英語)によると、消費者の約3分の1が、過去3か月以内にカスタマーサービスとのやりとりでチャットを使用しており、前年度から着実に伸びを示しています。
さらに、消費者はオンラインチャットを最も満足度の高い3つのチャネルの内の1つとして指定しています。
企業の側では、2020年に72%がオンラインチャットに対応しており、前年度より6%向上しています。

チャットは電話やメールと同等の、主流のチャネルとして定着しました。多くの企業では、次世代のチャットにて、チャットボットで強化されたセルフサービス機能が追加されます。当社の調査結果では、約半数(46%)の企業が、セルフサービスでチャットをすでに使用しています。これは、過去に音声のインタラクションで当社が観察した進化の様子に似ています。今では、多くの企業が、IVRセルフサービスを前面に打ち出しています。chat and bot adoption in the contact center

企業は運用面のメリットだけでなく、顧客体験の改善や顧客の問題解決の観点からも、チャットボットを好意的にとらえています。当社の調査によると、企業の72%が、チャットボットによって消費者の問題を軽減できると考えています。さらに、企業の間でAIの利用が普及しつつあります。66%が、AIを活用したツールを少なくとも1つ、コンタクトセンターで使用しています。

with businesses chatbots have a great rep

しかし、消費者が広範にチャットボットを利用し始めるまでに、解決しなければならない欠点がいくつか存在します。
テクノロジーは大きく進歩しましたが、チャットボットが最も効果的なのは、未だに単純で対象が絞られたタスクに限られています。
ほとんどの企業や消費者は、チャットボットはよりスマート化する必要があると考えており、チャットボットとやりとりする消費者の83%が、何らかの時点でエージェントがサポートするチャネルへの切り替えを希望しています。

yet customers say there is room for improvement

消費者が二の足を踏んでいるにも関わらず、今後1年間にチャットボットへの投資を計画している企業は32%となっています。投資が活性化することでテクノロジーが進化し、チャットボットやバーチャルエージェントなどの関連ソリューションを利用する顧客が増えます。

therefore many contact centers plan to invest

チャットボットとバーチャルエージェントの違い

ボットの世界は独特の用語で溢れています。ボット、チャットボット、ボイスボット、バーチャルアシスタント、バーチャルエージェントなどの用語が無造作に使われ、わかりにくくなっているかもしれません。一部は同じものを別の言い方で表現しているだけのこともありますが、チャットボットとバーチャルエージェントの場合は、わかりやすい大きな違いがあります。この2つに注目してみましょう。

チャットボットとバーチャルエージェントの違い

ボットの世界は独特の用語で溢れています。
ボット、チャットボット、ボイスボット、バーチャルエージェントなどの用語が無造作に使われ、わかりにくくなっているかもしれません。
一部は同じものを別の言い方で表現しているだけのこともありますが、チャットボットとバーチャルエージェントの場合は、わかりやすい大きな違いがあります。
この2つに注目してみましょう。

チャットボットはオンライン、ソーシャルチャネル、バックオフィスで導入し、単純で反復的なタスクを自動的に実行できるプログラムです。企業組織は業務要求に基づいてチャットボットを構築して導入するため、顧客と対応するチャットボットはそれぞれ、他のチャットボットとは異なる目的と機能を有しています。
チャットボットは目的が明確に狭く定義されたタスクを処理する際に最も効果的なため、コンタクトセンターにおけるチャットボットは次に挙げるようなタスクに適しています。

よくある質問への回答
安全かつ正確な取引の処理
情報、ドキュメント、その他のコンテキストに沿ったサポートの提供
エージェントへ次の対処を提案してナレッジベースのコンテンツを引用して支援

チャットボットは特定のルールに基づいており、通常は特定のタスク専用で、人工知能を使用する可能性があります。
チャットボットが処理できるタスクは通常、情報の共有と収集に限定されています。

ルールに基づくとは、チャットボットがタスクを完了させるため、決定ツリーに依存することを意味します。例えば、ボットは顧客へ3つの選択肢を示してインタラクションを開始することがあります。
選択肢に応じて、チャットボットが何を言い、何を行うかが決定されます。ルールベースのチャットボットの知識や能力を拡張するには、人間が介入する必要があります。
何がチャットボットで、何がバーチャルエージェントなのかは、個人の意見やベンダーの立場によって異なりますが、一般的には次のように規定されています。

バーチャルエージェントは、自然言語の処理や理解、機械学習などの人工知能機能を活用するため、チャットボットよりも洗練されている傾向があります。言語処理機能を使用して、バーチャルエージェントは人間の発言を理解し、その意図を特定して適切に応対できます。エージェント利用するたびに機械学習を通じてスマート化されます。つまり、インタラクションから得た知識をまとめて「学習」し、自身で特定の能力を強化できることを意味します。
バーチャルエージェントは通常、顧客が抱えるより複雑な問題を、チャットボットよりも効果的に解決できます。

チャットボットのメリットと効果を最大限にするヒント

best practice concept

近年、多くの企業がチャットボットを試してきたおかげで、企業がチャットボットを新たに導入する際に役立つベストプラクティスが出てきました。以下は、チャットボットを成功裏に導入できた企業組織での経験に基づくものです。

小規模から始め、徐々に成長させて拡張

チャットボットはカスタマーエクスペリエンスに影響を与えるため、企業組織は新しいボットを慎重に扱い、試運転、評価、調整を経てから、拡大すべきです。幸いなことに、チャットボットはこの導入方法に適しています。企業は少数のタスク、および/または限定されたデジタルチャネルでの使用から開始できます。例えば、チャットボットは注文状況のリクエストやパスワードのリセットに処理を限定して試行できます。
または、企業のウェブサイトで試行してから、将来的にFacebookのメッセンジャーへ追加できます。

ボットのユースケースを構築する前に、NLU、顧客の感情、カスタマージャーニーを分析

ユースケースを構築する前に、NLU(自然言語理解)、顧客の感情、カスタマージャーニーのデューデリジェンスを実行してください。チャットボットがどの程度人間の言語を理解できるか、強みと弱みを明確に理解する必要があります。できれば実際のタッチポイントで顧客の感情を評価することも必要です。すでに不満が高まっているタッチポイントで、不完全さが残るチャットボットを使用して、問題を悪化させたくはないでしょう。
また、カスタマージャーニーの中でも、チャットボットが最も効果を発揮する場所に配置するべきです。例えば、顧客の行動でサポートが必要なことが促されたら、サポート用のチャットボットを提供する、などです。

プロセス全体にわたり、すべてのステークホルダーと密に連絡をとる

顧客に対応する新しいテクノロジーを導入する場合は、必ず社内の関心を呼びます。
企業の誰もが、顧客を十分にケアすることに対して利害関係を持っているからです。ただし、チャットボットなど、より「奇抜な」テクノロジーでは、あなたのプロジェクトに対する社内の注目が普段より高まるはずです。ステークホルダーと、こまめに、透明性を保って連絡をとりあってください。特に、試運転のチャットボットでは、何が期待できて、何が期待できないかを明確にします。
また、ステークホルダーにはコンタクトセンターエージェントも必ず含めてください。
彼らは、チャットボットが業務プロセスやエージェントの役割にどう影響を与えるかについて、多くの質問を抱えているはずです。
当社の調査によると、一部のエージェントはボットの導入を「競争相手」と見なし警戒するかもしれませんが、初めからエージェントを交えることで、その心配を大きく和らげられます。
例えば、チャットボットが担当する業務のやりとりがどれになるか、エージェントの意見が取り入れられれば、複数の効果が得られます。
エージェントは普通、情報収集やパスワードのリセットなど、反復的で簡単な作業を嫌がります。しかし、それこそが、ボットが効果を発揮する場所です。
エージェントは、人間の問題解決スキルが必要とされる場所でのやりとりに集中できます。関係する誰もが得をする、Win-Winの状態です。

すべてを自動化しようとせず、対象を絞る

チャットボットは、狭い範囲で明確に定義された、予測可能な分野で高い効果を示す点を思い出してください。この条件に合致した、大量のコンタクトが要求される領域が、チャットボットに最適な場所です。成功裏にチャットボットを導入するには、適切なタスクを送る必要があります。コンタクトセンターに最適なチャットボットは、能力の範囲を超えて動作しようとはしません。

顧客へガイダンスとコンテキストを提供

チャットボットは、洗練された形式の、顧客のセルフサービスです。そのため、顧客がエージェントへ転送する必要が無いように、ボットをうまく動作させたいはずです。コンテキストとガイダンスを提供すれば、それを効果的に実現できます。例えば、ボットが次の手順を予測できるように構築し、顧客へ「残高がお分かりになりましたね。公共料金の支払いへ進みますか?」など、ガイダンス形式の質問を行えます。

エージェントへスムーズに転送

セルフサービスを試す顧客の半数がやりとりを完了させるためにエージェントへ切り替えている事実はご存じですか?エージェントのサポートへスムーズに切り替えられる方法を考えてください。ここで大切なことは、顧客へサポートを得る方法を明確に示し、チャットボットでのやりとりの情報をエージェントへ提供することで、顧客が身分や問題を繰り返さずにすむようにすることです。また、チャットボットを使用する当社の顧客の多くが、必要に応じてエージェントへ切替えやすくすることで、顧客がチャネルを使用する意欲を高めることにもなります。

作成・開発済みのコンテンツとウェブプロセスを再利用

チャットボットを効率的にリリースするためには、すでにあるものを再開発せず、既存のコンテンツとプロセスを再利用してください。
これで、スケジュールが短縮され、実装が速まり、重複させて不要に複雑にすることがなくなります。例えば、ボットにパスワードをリセットさせる場合は、大まかな流れは、エージェントが行う作業として設定した内容がボットに対するガイダンスとして使用できます。または、消費者が配送状況を聞く場合、エージェントが身分認証を行うのと同じ情報を収集する場合、エージェントが情報入手に使用するのと同じシステムへアクセスさせられます。

測定、報告、分析 - 測定できないものは管理できません

チャットボットのライフサイクルを通じて、パフォーマンスを継続的に検証する必要があります。これで、バグ修正、性能強化、機能追加などで、データに基づいて決定を下せるようになります。チャットボットの設計時・開発時には、必要に応じて関連の測定機能を含めてください。

顕密に統合されたソリューションで管理労力を削減

最終的には、チャットボットは特定のやりとりを自動化して顧客の問題を完全に解決し、コンタクトセンターのコストを減らして顧客とのエンゲージメントを推進する必要があります。つまり、例えばボットが顧客の予約設定をサポートする場合、予約可能な時間帯を取得して、顧客のスケジュール設定システムへ新しい予約を書き込めなければなりません。ボットを用いて自動化を成功させるには、理想的には手作業が一切必要なくなるよう、バックオフィスと緊密に統合させる必要があります。

現在求められているよりも柔軟で拡張性の高いソリューションを選択

チャットボットが精密に調整されたカスタマーサポートのツールに進化できれば、利用する分野が拡大し、他のワークフローも自動化させたりする場合に、それまでの設定を無駄にしたくはないでしょう。チャットボットの選択基準として、柔軟性と拡張性も取り入れてください。

チャットボットの種類と導入事例

chat bot future marketing 

チャットボットのすべてが同じように動作するわけではありません。便利な機能と優れた顧客体験を提供する点において、チャットボットの効果は様々です。
以下、ベストプラクティスに基づく5つのチャットボットの使用例を紹介します。

Erica(バンク・オブ・アメリカ)

バンク・オブ・アメリカのバーチャルエージェント、Ericaは自然言語処理などのAI機能を使用して、口座の残高照会、支払い日の設定、知人への振込、支払猶予の申し込みなど、顧客の財務管理を支援しています。Ericaは、チャットボットとバーチャルエージェントが、消費者と企業の両方を支援する、優れた例です。Ericaは必要に応じて拡張できます。COVIDによるロックダウンの初期、毎月100万ものEricaユーザーが新たに追加されていました。Ericaは毎日、いつでも勤務しているため、マスクを着用したり列に並んで入場する必要はありません。

Ericaの優れた点は次のとおりです。

顧客の問題を解決できる、便利でパーソナライズされた機能を提供
素早くシームレスに拡張可能
小規模からはじめ、徐々に機能を追加
エージェントへスムーズに転送でき、顧客は身分を再証明したり問題を繰り返し説明する必要なし

Juliet(ウエストジェット)

カナダの航空会社、ウエストジェットは2018年にJulietを導入しました。フライトの予約や変更、フライト状況の確認、旅行の払い戻し処理などのやりとりで、顧客から寄せられるよくある質問に答え、サポートするのが目的です。
JulietはFacebookメッセンジャー、Googleアシスタント、WhatsAppに控えており、53万件以上ものサービスチケットを処理しました
パンデミックのピーク時は、Julietは毎分200以上もの問い合わせを解決できました。Julietは87%の解決率を持ち、ローンチ時の24%からはるかに改善されています。
ウエストジェットはJulietの導入以降、顧客満足度が24%上昇しています。

Julietの優れた点は次のとおりです。

対象を絞った手続きを処理
高い解決率
拡張可能
ウエストジェットはJulietの効果へ継続的に注力(解決率の大幅な上昇が裏付け)
顧客満足度に対するポジティブな影響
エージェントへスムーズに転送

Dom(ドミノピザ)

ドミノピザの企業アプリとFacebookメッセンジャーで、同社の音声操作エージェントDomが実装されています。Domは顧客の注文受付と配送状況の追跡をサポートします。顧客は、Domへ「pizza」(ピザ)と指示したり、ピザの絵文字を送信するだけで、すぐに注文できます。
Domはユーモアあふれる個性で知られ、導入当初に問題が多発した際は、ユーザーへ謝罪すらしています。

Domの優れた点は次のとおりです。

便利な機能
楽しい個性でユーザーをおもてなし
ドミノピザ自身が、このボットにコミットし、様々な改善に取り組んでいる
複数のデジタルチャネルで利用可能

XiaoIce

Microsoftは中国語を話すソーシャルアシスタント、XiaoIceを2014年に導入し、最初の3か月間に5億もの会話をこなし、デジタル業界で話題を巻き起こしました。XiaoIceは、今では6億5000万ものフォロワーを擁します。ボットは高度に洗練されたAIテクノロジーを用いて作成され、公開された700万もの会話を使用してトレーニングされています。

結果として、コンテキストと気遣いを理解し、感情分析を使用して共感を示せる、ソーシャルアシスタントです。XiaoIceは質問に答え(Microsoftは「Cortanaの妹」と呼んでいます)、詩を引用し、冗談を述べ、歌を歌うことすらこなせます。興味深いことに、ボットは中国政府についてネガティブな発言を開始したため、2017年に検閲されています。これはマシンラーニングに関連する事象です。それ以降、XiaoIceは政府についての会話を避けるようプログラミングされています。XiaoIceはあまりにも成功を収めたため、Microsoftは2020年に組織として独立させました。

XiaoIceの優れた点は次のとおりです。

ほとんどのボットよりも人間に近い会話を処理可能
人気を集めて広範に普及した、親しみやすい個性と能力を所有
感情分析を使用して、人間の感情へ適切に反応可能
コンテキストと関係構築を理解し、長時間、正常な会話を維持可能

Benji(AskBenji)

連邦学資援助免除申請(FAFSA)を最近利用した方であれば、流れがわかりにくいことはご存じでしょう。これを理解していたアリゾナ州立大学は、SMSを通じて利用できるボットを作成して、学生がこの重要なプロセスを処理できるようにしました。Benjiはルールベースのボットで、自然言語処理を使用してキーワードを特定し、適切に応答します。FAFSAの締め切りに関する問題に回答し、生徒をFAFSAウェブサイトへつなげるなどの作業を行います。Benjiはよくある質問へ素早く答え、生徒のストレスを軽減します。

Benjiの優れた点は次のとおりです。

対象となるデジタルネイティブなユーザーと関連の深いチャネルで利用可能
狭い範囲の責任 - BenjiはFAFSAプロセスに関する質問にのみ回答します
真のニーズに対処

Final thoughts

これら5つのチャットボット成功事例は、紹介したベストプラクティスの多くを取り入れて設計され導入されています。

特筆すべき点は、チャットボットのいくつかは小規模に始まり(時には、うまくいかなかったりしています)ながらも、企業が改善に取り組み続け、時間をかけて役割を増やしていった点です。こうした効果的なチャットボットのもう一つの特徴は、顧客へ便利な機能を提供している点です。
すべてのチャットボットが、実用的な目的をこなしているわけではありません。マットレスメーカーCasperのinsomnobot3000など、一部はエンターテイメント専用であり、ブランドの知名度を引き上げています。午後11時から午前5時の間にinsomnobot3000へテキストを送信すれば、ウィットに満ちたユーモアを送り返してくれます。
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